よまいごと
私は技術職。
常に高いレベルの技術を求められる。
それは時にコンマ数ミリレベルに及ぶほど厳しいものであったりする。
先方の要望に応えるべく、自分に対して貪欲に技術の向上を追い求めてきた。
それでも何の予告もなく一方的に取引を打ち切られることがある。
理由はわからない…
Facebookやinstagramを開くと、シェアされたその取引先の仕事が記事としてアップされている。
誰かが作ったであろうその仕事には、私に要求されていた高いレベルの技術は反映されてない。
急所でガタついてるミシン目、雰囲気のない表情…
私には決して許されることのなかった安っぽい技術を施された靴が「ブランド」と言う名のもとに賞賛を浴びている。
自分には何が足りなかったのか。それとも追い求め過ぎたのだろうか。理由は何処に…
技術職は常に高いレベルの技術を追い求めることが常と思っていたが、今その思いを信じることが出来ない。
技術を追い求めるのが間違いだとしたら、我々職人は何を信じて仕事をすればいいのだろう。
その答えを探すことも煩わしく思えてしまった。
そんな思いとは裏腹に、職人としての私の名前は業界の中で一人歩きしている。
だからと言って他より高い工賃で仕事を受けられる訳ではないのにね。
こんなことを考えてしまう自分にも嫌気がさした。
もっと心の強い人になりたい。
今出来ることは目の前の仕事に対して静かに向き合うこと。それだけ。
今日もいい仕事を。