靴の撮影 2
久しぶりのブログ更新は写しごとから。
昨年末に撮影機材を入れ替えて以来、写真撮影の仕事が少しずつ来るようになった。
その中でも多いのが「靴の撮影」…
作り手としての目線で撮って欲しいとの依頼である。
私の中に「作り手としての目線」が備わってるのか、いささか疑問ではあるがw
私が撮った写真を見て「その雰囲気が好きなので撮影をお願いします」と言っていただけるのはとてもありがたい。
先日もそんな依頼を受けて撮影をさせていただきました。
革を扱う業界では「Japan Leather Award」と言う賞が毎年設けられている。
2015年度のグランプリに輝いたのがこの靴である。
シボ部分に宿る独特な艶は、本漆を何度も塗り重ねることで表現されるもの。
日本古来の伝統革素材である。
この靴の作者はMakoto Futamotoさん。
木型製作者である。
彼とは何度か酒席を共にする機会があり、自身が削る木型へのこだわり、人間の足に対するマニアックな、ともすれば変態チックにも見紛うほどの心くばり、素材への思い…
いろんな話を聞かせていただきました。
彼が削った木型を初めて見たときの衝撃は、今でもはっきり覚えている。
靴屋の作るソレとは全く別物のフォルムとなった木型は、計算され尽くした数値とは裏腹に、独特な立体感が醸し出す雰囲気によって、なんとも魅力的な色気を放っていた。
今回撮影させていただいた靴は4足。
何の指示も縛りもなく、好きなように撮ってくださいとの依頼。
送られた箱を開けその靴たちを目の前にした時浮かんだのが「アンティークな情景の中に佇む靴」
伝統的な革素材とのマッチングを見てみたい…
早速アンティークな雰囲気の撮影スタジオを探してみたところ、辿り着いたのがこちら
様々なアンティーク品が置いてあるスタジオ、普段目にすることのない品物で溢れている。
現状復帰を条件に動かして構わないとのことなので、邪魔な物を視界から排除しながらの撮影。
なるべく自然光で撮りたかったので、スタジオ内に陽が差す時間を問い合わせて予約をした。
メインで使用したレンズは50mm F1.4 単焦点のみ。
敢えての選択、私の中では冒険だった。
絞りはほぼ解放、設定とフォーカス共にマニュアルでの撮影。
革のシボやミシン目、靴紐にコバ…
ピントをとことんまで追い込み撮影をした。
実のところ、物撮りは苦手としているのだが、この時だけは違った。
独特な色気を醸し出す靴たちにすっかり魅せられ、時を忘れて撮影に没頭した。
撮れば撮るほど次のアングルが浮かび、尽きることがなかった…
スタジオ以外でも撮影をした。
工房が入ってるビルにある某オフィス、そこの大テーブルに薄グレー色の生地を敷いて、自然光を頼りに撮ってみた。
アンティークスタジオとはまた違う顔を見せてくれる。
そして…
ちょうど満開の桜が散り始めの時期と重なったので、雨上がりの隅田川沿いでも撮ってみた。
散りゆく桜にモンキーブーツの革色がいい具合に映えたよう。
大好きな1枚となった…
感性だけを頼りに自由に撮影する機会を与えてくださったFutamotoさん、本当にありがとうございました。
次の作品が楽しみでならない。